環境エネルギー利用システム開拓

次世代情報社会を実現するIoTデバイスは,2030 年までに年間20 兆個を超えると予想され,世界中の研究者がしのぎを削って研究開発を行っている技術分野となっています.このようなデバイスを実現する上での技術課題として,IoT デバイスへの電力供給手法が挙げられます.電力供給手法として,小型ボタン電池等を使用することが考えられますが,環境面(電池廃棄による環境負荷),資源面(レアメタル資源の枯渇),そしてコスト面(バッテリ交換の労働コスト)の課題が存在します.したがって,小型かつメンテナンスフリーで動作するIoT デバイスの実現に向けた電力供給手法の確立が強く求められています.

メンテナンスフリー動作の実現に向けた電力供給手法として,エネルギーハーべスティングが注目されています.これは,光,振動,温度差,そして電磁波などの環境エネルギーを電気エネルギーに変換し,IoTデバイスへ電力を供給する技術です.環境発電デバイスの中でも,小型の太陽電池(PV cell: Photovoltaic cell)はあらゆる環境に存在する光で発電可能なため,実用性が高いことが知られています.しかし,PVセルの出力電圧は1 セルあたり0.6 V 以下と低く,環境に依存して変動してしまいます.アプリケーションの駆動電圧は1.2-1.8 Vであり,また二次電池(スーパーキャパシタなど)の充電電圧は2.4 V 程度となっています.すなわち,PV セル単体でのアプリケーション回路の駆動および充電は困難になっています.


エネルギー源出力電圧出力電力密度
光(室内)~0.6 V~10s uW/cm2
振動~10s V~10s uW/cm2
温度差発電~10s mV~10s uW/cm2
電磁波~10s mV~100s nW/cm2

図:小型シリコン太陽電池(2.5 x 2.5 mm)とその電流電圧(電力)特性.小型発電素子の発電電力は極めて微弱(約400 nW)

そこで本研究では,低電圧エネルギーハーベスティングに向けて,環境発電素子から得られた限られたエネルギーを昇圧し.二次電池の充電電圧およびIoT デバイスの駆動電圧を高効率に生成することを目的として,研究を行っています.